【企業インタビューVol.10】「民泊を、“ただ泊まる場所”にはしたくない。」— Stay Buddy株式会社 代表取締役 巻木周平氏に聞く、宿泊体験から逆算する民泊運営とは
民泊運営というと、
- 「予約サイトへ掲載する」
- 「価格を調整する」
- 「ゲストからのメッセージに対応する」
- 「清掃を手配する」
といった業務をイメージする方も多いのではないでしょうか。
しかし、巻木(まきぎ)氏が考える民泊運営は、それだけではありません。
「誰に泊まってほしいのか」から逆算して、内装やインテリア、写真、予約サイトでの見せ方まで設計する。
そして運営開始後も、毎月の数字を確認しながら改善を続けていく。
巻木氏は、新聞記者、飲食店経営、広告・ブランディング、コピーライターなど、民泊とは異なる業界を経験してきました。
だからこそ、従来の不動産管理とは少し違う視点から、
「どうすれば選ばれる宿になるのか」
を考え続けています。
今回は巻木氏に、民泊事業を始めたきっかけ、運営で大切にしていること、オーナーから評価されている点、そしてこれから民泊を始める方へ伝えたいことを伺いました。
Stay Buddy株式会社 会社概要
| 会社名 | Stay Buddy株式会社 |
| 会社URL | https://stay-buddy.com/ |
| 所在地 | 〒530-0015大阪市北区中崎西1-5-22 中山文甫会館4E ほか北海道にも拠点あり |
| 代表者 | 巻木 周平(まきぎ しゅうへい) |
| 設立 | 2024年5月 |
| 対応エリア | 全国 |
| 主な事業 | 民泊・ホテル運営代行業 ホテル企画・開発・運営業 民泊・ホテル清掃業 空き家・古民家活用支援業 宿泊施設の売却・M&A仲介業 インバウンドメディア事業 |
新聞記者、飲食店、コピーライター。異業種から民泊の世界へ
― まず、民泊事業を始めたきっかけについて教えてください。
もともとは民泊とはまったく関係のない業界にいました。
最初のキャリアは新聞記者です。
その後、飲食店を経営したり、広告代理店やブランディング、クリエイターが所属する会社でコピーライターをしたりしていました。
コピーライター時代には、いろいろな企業や経営者を取材する機会がありました。
その中で感じたのが、本気で事業に向き合っている経営者ほど、単に「お金を稼ぎたい」だけではない、その先の目的を持っていることでした。
それを見ながら、
「自分だったら、何のために事業をするのか」
を考えるようになったんです。
「日本に直接貢献できる事業をしたい」
巻木氏がたどり着いたテーマの一つが、日本への貢献でした。
もともと歴史に関する本やドキュメンタリー、小説などが好きだったという巻木氏。
過去の世代が築いてきたものの上に、今の日本がある。
その中で、自分も少しでも次の世代に何かを残せる仕事がしたいと考えるようになったといいます。
そこで注目したのが、インバウンドでした。
海外から日本へ来る人を増やし、日本国内で使われるお金を増やす。
それなら、自分たちの仕事が直接的に日本への貢献につながるのではないか。
さらに、飲食店経営時代の関係者に宿泊業界の出身者がいたことも重なり、2023年に民泊運営の世界へ飛び込みました。
実績も知識もない。最初の武器は「熱意」だった
― 最初から順調だったのでしょうか?
民泊事業を始めた当初は、当然ながら運営実績も、業界内での知名度もありませんでした。
実績を見せて営業することもできない。
民泊について話していても、経験のある人から見れば「まだ始めたばかりだな」と分かってしまう。
そんな状態からのスタートでした。
だからこそ、最初に武器になったのは、これまでの実績ではなく、
「この物件を、本気で良くしようとしてくれている」
と感じてもらえる姿勢だったと巻木氏は振り返ります。
一つひとつの物件に向き合いながら、最初の4件ほどを任せてもらい、実際の運営を経験。
そこで、予約の取り方、ゲスト対応、施設づくり、運営開始後の改善など、民泊ならではのノウハウを積み重ねていきました。
そして実際に運営していく中で、巻木氏は民泊業界に一つの可能性を感じます。
「不動産管理」と「ホテル運営」の間を埋めたい
「民泊は、単なる不動産管理として考えるより、“宿泊サービス”として本気でつくり込むことで、もっと良くできるのではないか。」
民泊は、不動産でありながら宿泊サービスでもあります。
しかし、一軒家や小規模な民泊では、大規模ホテルのように一施設へ多くの人や予算をかけることはできません。
一方で、一般的な賃貸管理とも仕事の内容はまったく異なります。
だからこそ巻木氏が考えたのが、
ホテルや宿泊施設が行っている「選ばれるための工夫」を、小規模な民泊にも取り入れること。
でした。
単に物件を管理するのではなく、
- 誰に泊まってもらうのか。
- どんな内装にするのか
- どんなインテリアを置くのか
- どんな写真を撮るのか
- 予約サイトでどう見せるのか
こうしたところまで考えることで、同じ場所・同じ広さの物件でもパフォーマンスは変わります。
物件をただ管理するのではなく、
「誰に泊まってもらうのか」「なぜこの宿を選んでもらうのか」まで考えてつくる。
現在の巻木氏の運営スタイルは、実績も正解もなかった最初の数件から形づくられていったといいます。
「クリエイティブにこだわる=お金をかける」ではない
― 内装やクリエイティブにこだわると、初期費用も高くなりませんか?
「こだわる」と言うと、お金をたくさんかけるイメージを持たれることもあります。
でも、必ずしもそうではありません。
重要なのは、
「この場所なら、どんなゲストを狙うのか」
を考えること。
同じ予算でも、ターゲットに合わせてインテリアを選び、写真の撮り方や掲載方法を変えることはできます。
新聞記者やコピーライターとして培ってきた「言葉」の力。
広告・ブランディングの仕事で培ってきた「見せ方」の力。
それらを宿泊施設の企画や集客に活かせることは、巻木氏ならではの強みです。

ゲストから「質問が来ない宿」をつくる
もう一つ、巻木氏が重視しているのが、宿泊中のストレスをできるだけ減らすことです。
- メッセージ対応
- 電話対応
- 必要な場合の駆けつけ対応
もちろん、問い合わせが来たときに適切に対応することは重要です。
しかし巻木氏は、その一歩前を考えます。
「そもそも、なぜその問い合わせが発生したのか?」
例えば、設備の使い方について何度も質問が来るのであれば、事前案内や施設内の掲示を改善する。
チェックイン方法について迷う人が多いのであれば、案内自体を分かりやすくする。
問い合わせに素早く答えるだけではなく、
「問い合わせそのものが発生しない宿にする」
という考え方です。
大人数で泊まるなら、「広さ」だけでは足りない
― ゲスト満足度を高めるために、特に意識していることはありますか?
例えば、一軒家へ5〜6人以上のグループで泊まるケース。
海外からのゲストの場合、家族だけでなく3世代で旅行するケースもあります。
そこで重要になるのが、単純な広さではありません。
寝室をきちんと分ける。
ベッドの配置を考える。
それぞれのプライバシーを確保する。
一方で、全員が一緒に食事をしたり、話したりできるダイニングスペースもつくる。
トイレ、お風呂などの水回りは複数確保する。
「実際に誰が、誰と泊まるのか」まで想像して施設を設計する。
そして、その特徴が予約サイトを見た人にも伝わるよう、写真や文章で表現する。
施設づくりと集客を別々に考えないことが重要だと巻木氏は話します。
オーナーから評価されているのは、「毎月改善を続ける姿勢」
― オーナー様から評価されているのは、どんなところでしょうか?
もちろん、一番は利益です。
ただ、民泊の売上は運営会社の努力だけで決まるものではありません。
立地や物件そのものの条件によって、大きく左右されます。
だからこそ、条件にハンデがある物件であっても、
「どうすれば少しでも良くできるか」
を毎月考えることを大切にしています。
- 前月はどうだったのか
- どんな傾向が続いているのか
- 別の物件で成功した施策を試せないか
- 宿泊プランを変えた方がいいのではないか
- 1泊予約が多く、清掃費などを含めると利益が残りにくいのであれば、宿泊日数の設計を見直せないか
特に数字が芳しくない物件については、毎月何かしらの改善案を出すことを意識しています。
こうした姿勢は、特に他社から運営を切り替えたオーナーから評価されることが多いといいます。
「儲かります」とは簡単に言わない
― これから民泊を始める方へ、アドバイスはありますか?
巻木氏が最初に挙げたのは、少し意外な言葉でした。
「楽に稼げる不労所得として考えるなら、おすすめしません。」
民泊は、物件さえ持っていれば自動的に利益が出続けるビジネスではありません。
- 立地
- 物件の取得条件
- 間取り
- 初期費用
- 運営費
- 清掃費
さまざまな条件によって収益性は変わります。
そのため巻木氏は、条件が厳しい物件について相談を受けた場合、
「これくらい儲かります」
という理想的な数字だけを見せるのではなく、
うまくいかなかった場合に、どこまで数字が悪化する可能性があるのか。
最悪のシナリオも含めて説明するようにしています。
最悪のシナリオを伝えた上で、それを上回ることを目指す
オーナーからすれば、当然、収益性の高いシミュレーションの方が魅力的に見えます。
しかし、高い収益予測を前提にスタートして、実際の数字が届かなければ、後から不信感が残ります。
だからこそ、
最初にリスクをきちんと伝える。
その上で、それでもオーナーが挑戦すると決めたのであれば、想定を上回る結果を目指して運営する。
巻木氏は、短期的に多くの契約を取ることよりも、
長く付き合ったときに不信感を残さないこと
を重視しています。

これからは、「ちゃんと運営している宿」が残る
― 今後の民泊市場をどのように見ていますか?
インバウンド需要そのものは、今後も期待できます。
一方で、民泊であればどんな施設でも安定的に収益を上げられるわけではありません。
宿泊施設が不足していた時期は、多少立地が悪くても、施設に大きな特徴がなくても予約が入るケースがありました。
しかし供給が増えれば、状況は変わります。
- 立地
- 施設の魅力
- クリエイティブ
- ゲスト満足度
- 運営品質
こうした部分にきちんと向き合っている施設と、そうではない施設との差は大きくなっていく。
巻木氏は、
「地道にゲスト満足度を高め、価値を提供し続ける事業者が残っていく」
と考えています。
巻木周平氏の運営がおすすめのオーナー様
✅「物件管理」ではなく「宿泊事業」として民泊を運営したい方
物件を維持するだけでなく、ターゲット設定や施設づくり、写真、文章、予約サイトでの見せ方まで含めて考えたい方。
✅物件のコンセプトやクリエイティブにこだわりたい方
高額な内装を入れるという意味ではなく、限られた予算の中でも「誰に泊まってもらうのか」から逆算した施設づくりをしたい方。
✅現在の運営会社から乗り換えを検討している方
毎月の報告だけではなく、数字を見ながら継続的に改善提案をしてほしい方。
✅良いことだけでなく、リスクもきちんと説明してほしい方
高い収益予測だけではなく、条件が厳しい場合には厳しいと率直に伝えてくれる運営会社を探している方。
✅大人数向け・一棟貸しの民泊を検討している方
実際のゲスト構成まで想像し、プライバシーと団らんの両方を考えた施設づくりを相談したい方。
編集後記
今回のインタビューで特に印象的だったのは、
「どうすれば予約が入るか」と「どうすれば泊まった人がストレスなく過ごせるか」を、セットで考えていること。
でした。
写真や文章を工夫して、予約したくなる宿をつくる。
でも、予約を取って終わりではない。
実際に泊まったゲストが迷わないように案内を改善し、大人数であればプライバシーまで考えて空間を設計する。
さらに運営開始後も数字を見ながら、毎月改善を続けていく。
その背景には、新聞記者やコピーライター、広告・ブランディングなど、異業種で積み重ねてきた巻木氏ならではの視点があります。
そしてもう一つ印象的だったのが、
「最悪のシナリオまで伝える」
という姿勢です。
民泊は、誰でも簡単に利益を出せるビジネスではありません。
だからこそ、良い数字だけを見せて契約を取るのではなく、リスクも伝えた上で一緒に挑戦する。
華やかな収益シミュレーションよりも、長期的な信頼関係を優先する。
民泊を単なる「物件管理」ではなく、一つの宿泊事業として本気で取り組みたいオーナーにとって、心強いパートナーとなるのではないでしょうか。

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